ご存知のとおり、日本には本格的な「キットカー文化」はありません。自動車は「メーカーが作るもの」という暗黙の、そして至極全うな了解がそうさせているといって良いでしょう。管理人は、「個人の夢の崇高さ」にかまけてこの現実を非難するということはありません。この現実こそが、ドライバーに対して安全性を保障する一つの要素であるからです。
しかしながら、キットカー文化が確立されているということは「うらやましい」の一言に尽きます。かつて管理人も同じ理想を描き、自動車の造形に従事していた時期がありましたからその思いはなおさらのことです。果たしてDaveさんもそんな自動車の知識に長けた経験を積んだ一人だったのかと思い、改めてメールを送りました。
驚いたことに、 Daveさんは銀行を定年退職後に、キットカー製作を始めたのだそうです。御年69歳ということも判明し、もっとお若いと思っていた管理人はさらにビックリです。キットカー製作を始めて6年の間にPorsche356とJaguar
SK120の2台のレプリカを完成させたそうです。レポートの"The 2005 CCC
Show"のリンク先をご覧ください。2ページ目の左上の写真と、3ページの右上の写真がDaveさんの愛車です。Daveさんのように、CCCのメンバーはエンジニアばかりのクラブではありません。彼らは、車を製造することによって多くのスキルを学び、歳を重ねるごとに新しい発見があることが素晴らしいと仰います。
個人が自動車を作って公道を走らせることができる、このことはニュージーランドや、イギリス、アメリカの自動車の安全規定が緩いということには当たりません。国ごとの違いはありますが、どの国の規定も厳しいことには変わりありませんが、日本との大きな違いは、この厳しい規定を個人レベルでクリアするために尽力する団体があるということです。キットカー製造において必ずクローズアップされるキーワードに"SVA"という安全基準がありますが、ニュージーランドでは、"Low Volume Vehicle Technical
Association"という、CCCのような団体が加盟する組合組織がニュージーランド版SVAを管理しています。このシステムは「自動車を製造しない自動車メーカー」のようなものであり、明確かつ厳密な検査と、適切な指導によって、自動車製造という趣味を可能にするよう協力しています。
近年、トミーカイラをはじめとするコンプリートカーに見られるように、新興メーカー参入の規制は緩和されています。特に光岡自動車のコンパクトカーはキットフォームの販売も行われています。一方でこうした改造車や組立車の認可には、それぞれが煩雑な手続きを強いられている現状があり、光岡自動車のコンパクトカーともなれば、組立ての苦労と手続きの手間を考えると、完成車を購入するほうが効率的という考えに至るでしょう。
キットカー文化の確立には、規制の緩和と並行して、むしろこうした「自動車を製造しない自動車メーカー」のシステムが必要でしょう。そしてそれ以上に、こうしたシステムを支えるための成熟した文化…例えばチャレンジや夢に対する寛容さであったり、抱いた情熱に対する責任…が必要なのかもしれません。
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