今シーズンのF1も2戦を終えました。ルノーとトヨタの絶好調、レッドブルの大健闘、そしてフェラーリとBARが蹴躓くという、殆どの人が予想だにしなかった展開はある意味新鮮であり、特に日本人から見ればトヨタがホンダよりも先に優勝してしまうのではないかというハラハラドキドキを提供しています。 マレーシアGPまでを見た限りでは、新レギュレーションの功罪か、どのワークスエンジンもパワーについてはほぼ横一線、現状はエンジンライフの差がマシンを攻められるか否かに大きく影響しているようです。マイナートラブルだったとは言うものの、この点でホンダは大きく水をあけられてしまったように感じます。 現行F1は、ホイールベース間は「ステップド・ボトム」と形状が決められているので、マシンの差はオーバーハングが空力に大きく左右し、その形状によって性能が決まるといっても過言ではありません。空力の良否はタイヤの減りに関わってきます。良く「タイヤにやさしい」とは、エアログリップによって一律に押さえつけられているのでタイヤの偏磨耗が起こりにくいということなのでしょう。そのタイヤの耐久性から、ルノーは空力に一日の長があり、トヨタはフロントの空力を改善してルノーと勝負できるところまでの水準に持ってきたようです。フェラーリの「子持ちフロントウィング」はウイングのセンターを落とし込むという意味では、他チームと同じ思想なのでしょうが、如何せんドラッグが大きそうに見えます。バーレーンGPから、前倒しで新車F2005を投入するようですが、F2005も「子持ちウイング」ということで効果のほどや如何に。BARも同様の考え方でフロントウィングを構成していると考えられますが、速さで結果が出ないとなると、インプレッションなどから総合して、おそらくリアの空力が酷いのでしょう。 さて、新レギュレーションを期に、横一線で始まったはずの開発競争が、僅か2戦でどうしてここまで差がついてしまうのか。ひとえに各チームの「リソース」の差と言えるかと思います。「リソース」とは、その意味するとおり、利用できるハードウエアやソフトウエア資源を指します。もう少し砕けた言い方をするならば、「何をどう使ったら『ハマる』か」ということなんですが、例えばルノーの場合。昨年のルノーは突出した活躍こそなかったものの、レーススタートのダッシュ力たるやフェラーリやBARをも凌ぐ実力を持っていました。ルノーは「トラクションの使い方」というリソースがあったということになります。これを大事して、今シーズンのマシンを作り上げた結果が今期2戦の結果を生んだのではないでしょうか。
レッドブルの場合。オーナーが変わって、ドライバーが変わったら大活躍しました。つまりマシン作りの素養は元々良かったということです。もう少し突っ込んで言えば、フォードが如何にチームづくりをサボっていたかということなんですが。第一、去年のジャガーレーシングのドライバー、名前覚えてます??今年クルサードをつかまえたということは、レッドブルのような規模のチームにとってこの上ないデカイ買い物だったということです。 トヨタは、潤沢な資金力をバックに勝てるデザイナーを手元に収め、今年は勝ちを知っているドライバーを引き入れました。ここがまず優勝経験のないドライバーラインナップをそろえたBARとの大きな違いでしょう。また、昨年は、不調時に開発を止め、マシン開発の方向性を議論する時期があったと聞きます。トヨタは自動車生産の現場においても、ラインを止めて効率化のための議論をするというケースがあるようです。現在のF1で開発を止めるということは、非常に勇気の要る決断ですが、これも自動車生産で培った「リソース」があればこそ出来た決断なのでしょう。そして、つい最近では元ミシュランのタイヤエンジニア
パスカル・パスロンの加入が噂されています。パスロンは、かつては車体エンジニアとしてターボ時代のルノーF1チームの足回りの開発を経験し、ミシュランに移籍してからは昨年までレーシングタイヤの開発に携わりました。元々トヨタはエンジンの耐久性には定評がありましたから、サスペンションとタイヤを知り尽くしたエンジニアが加入し、勝てる人材を揃えたところでホンダよりも先にGP優勝を達成するかもしれません。もしかするとシーズン終了後には、日本におけるF1の代名詞がホンダからトヨタに変わってしまうことも考えられるほど、勢いの差を感じます。 チームづくりという点で言えば、ワールドチャンピオン経験者のビルヌーヴが加入したザウバーには、何らかの影響があるものと期待していましたが、これまでのパフォーマンスは、かつてと変わるところがないようです。型落ちとはいえエンジンはフェラーリを積みながら、これまでも目立ったパフォーマンスを見せたわけではなく。車体に問題があったとしても、メルセデス・ベンツと組んで耐久レースに参戦していた時代は選手権を席巻したチームですから、その原因ははかり難く。頼みの綱のワールドチャンプは、若きチームメートよりも遅いという、これまた理由がはかり難い。
ビルヌーヴはシーズン途中での引退も噂されますが、宝の持ち腐れ的なザウバーの今後を案じつつ、バーレーンGPでは、ペーター・ザウバーとビルヌーヴの無線でどんな罵り合いが繰り広げられるか楽しみにしたいと思います。
|